1. Circuit theory of unconventional superconductor junctions

Physical Review Letters Vol. 90 No. 16 167003_1-4 2003

Y. Tanaka Y. Nazarov S. Kashiwaya 

超伝導体と常伝導体の接合の合成抵抗がいかにきまるかは古くからの問題であった。90代初頭、ヨーロッパ旧ソビエトを中心としてメソスコピック接合系の物理において重要な進展があり、常伝導体の中での不純物散乱が存在する時に、接合の電気抵抗が近接効果によっていかに影響を受けるのかが解明された。その結果、多くの新しい現象が発見された。しかしこうした研究はすべて従来型のBCS超伝導体に限られていた。この論文中では、南部-ケルディッシュグリーン関数法を用いて常伝導体の中での不純物散乱の効果を考慮して異方的超伝導体接合のコンダクタンスを計算する一般論を提案した。ケルディッシュグリーン関数の方法を用いる必要があったのは、ケミカルポテンシャルが常伝導体の中で空間変化する効果をとりいれなければならなかったからである。本論文中では、常伝導体は平均自由行程よりも長い系、異方的超伝導体ではクリーンな系を仮定し、準古典近似を用いて、南部ケルディッシュグリーン関数から定義される流れの密度(マトリックスカレント)の一般式を導出した。この式はきわめて一般的で、異方的超伝導体に広く適用可能である。角度平均したマトリックスカレントが界面で保存する条件から、接合のコンダクタンスの計算を行った。この理論をd波の超伝導体に適用するとミッドギャップアンドレーエフ共鳴状態[アンドレーエフ束縛状態] と近接効果が互いに競合関係にあることが明らかになった。具体的にd波超伝導体に適用した詳細な計算は、Physical Review B, Vol. 69, No. 14, 144519 2004) [引用数71]においてなされた。本論文で始められた研究はこれまで存在していたメソスコピック超伝導という分野(ここでは従来型のs波の超伝導体の接合が研究対象となっていた)と異方的超伝導(強相関超伝導)の分野の両者を橋渡しする出発点になるものである(引用数88)。